ひとりの女性が拝殿の前で、一心に祈っている。

和服姿の彼女は、早朝の鎮守の森の、さやけし空気の中、ただひたすら祈り続けている。

私は、神社の門前に入り、ふとその光景に気がつくと、思わず歩みを止めていた。

 

日常の己を捨てて、ただひたすらに神に祈り続けている姿ほど、神の御前にふさわしいものはない。

それは、わずかな身動きもせず、まるで時空が止まったかのよう。。。

 

女性は、今、神と一つになっている。

そんな気がした。

そして、これほどに美しい姿はないと思った。

いくら力をもっている者でも、この美しさに敵う者などいないとさえ思った。

 

人間は神であると言われる。

その人間が、本当に神として在るとき、

誰もが、そのように美しい姿になりうるのだと思う。

そして見る人を圧倒する。

 

真の美はティファレットの世界にある。

それは、日頃の好き嫌いを言う己を手放したときに、初めて手にできる。

ヘルメスの言う、真の美は神の中にしか存在しないと言われる所以なのかもしれない。